2025年のDiscordは、単なる「チャットツール」から「アプリプラットフォーム」へと完全に進化を遂げました。この1年で最も重要だった変化は、アプリ内課金(収益化)の全面解禁と、アクティビティ機能(GUIアプリ)の実用化です。本記事では、2025年に発表された技術的変更、新機能、そして開発者が必ず対応すべきセキュリティ要件を総まとめで解説します。
2025年の変革:Discordで何が変わったのか?
2025年は「統合(Integration)」と「収益化(Monetization)」の年でした。開発者エコシステムに起きた4つの大きな変化を振り返ります。
1. アプリ内コマースと経済圏の確立
これまで外部サイトで行っていた支援や販売が、Discord内で完結するようになりました。
- ゲーム内アイテム販売 (IAP): ユーザーはDiscordを離脱せず、スキンや通貨を購入・ギフト可能です。
- 消耗型アイテムの解禁: サブスクリプションだけでなく、ポーションやガチャチケットのような「使い切りアイテム」も販売可能に。F2PゲームのようなマネタイズがBotでも実現しました。
2. アクティビティ機能 (Embedded App SDK) の成熟
ボイスチャンネル内で遊べるHTML5ベースのアプリ(アクティビティ)が実用段階に入りました。
- スマホ対応: タッチ操作やセーフエリア(画面のノッチ)への対応が必須化されました。
- リテンション向上: アカウント連携が強化され、ブラウザゲームよりも高い継続率を記録しています。
3. Botの「アプリ化」とUIの進化
テキストコマンドだけの時代は終わり、リッチなUIを持つアプリが標準となりました。
- アプリランチャー: チャット欄の「+」ボタンから機能を呼び出す形式が定着。
- UIコンポーネント: モーダル内でのテキスト表示などが強化され、画像生成に頼らずに綺麗な説明文を表示できるようになりました。
4. セキュリティと権限の厳格化
- メッセージ読み取り権限: プライバシー保護のため、審査がさらに厳格化されました。
- トークン管理: 古いトークン形式が廃止され、定期的なローテーションが求められています。
【時系列】開発者が押さえるべき重要アップデート一覧
2025年の動きを四半期ごとに振り返り、対応漏れがないか確認しましょう。
第1四半期〜第2四半期:基盤とUXの整備
- 1月(アプリ検索): 個人的な便利ツールやニッチなアプリも検索でヒットしやすくなりました。
- 3月(GDC 2025): ゲームアカウントとの紐付けが「1クリック」で完了するように進化。
- 5月(アクセシビリティ): Botが送信する埋め込み(Embed)やボタンの配色は、視認性の高いコントラスト比が推奨されるようになりました。
- 6月(画像圧縮): モバイル版での画像圧縮仕様が変更。ドット絵などがぼやける場合は、開発側でのサイズ調整が必要です。
第3四半期〜第4四半期:API変更と大規模対応
- 7月(API廃止): Botが自動でサーバーを立てる機能(Guild Create)が削除されました。今後はサーバーテンプレートを使用してください。
- 8月(権限変更): ピン留め権限が独立しました。
- 11月(セキュリティ): 古い形式の「Classic Tokens」が完全に無効化されました。
- 12月(年間まとめ): 「Checkpoint 2025」機能により、ユーザーが遊んだアクティビティが可視化され、アプリの露出機会が増加しました。
技術的な変更点と必須アクション (API & Gateway)
開発者がコード修正を迫られた(または迫られている)重要な変更点です。エラーを防ぐために再確認してください。
| 日付 | 変更内容 | 開発者が必要なアクション |
| 7/28 | サーバー自動生成の廃止 (POST /guilds 削除) | Guild Create APIの利用を停止し、ユーザーには「サーバーテンプレートリンク」を案内するUIへ変更する。 |
| 8/20 | ピン留め権限の分離 (PIN_MESSAGES 独立) | コード内の権限チェックロジックを修正。権限不足エラー時は、ユーザーに設定変更を促すメッセージを表示する。 |
| 10月 | メンバー取得制限 (Rate Limits) | Bot起動時に全メンバーを取得するのをやめる。必要な時に必要なメンバー情報だけを取得する設計(LRUキャッシュ等)へ移行する。 |
| 11/19 | Classic Token 廃止 | 古いトークンを使用している場合は、開発者ポータルから直ちに再発行を行う。 |
注意: **メッセージコンテンツ(Message Content Intent)**の読み取り権限は引き続き厳格です。「メンションされた時だけ反応する」設計を心がけてください。
2026年のマネタイズ戦略:どう稼ぐ?
2025年のアップデートにより、Bot開発はビジネスとして成立するようになりました。3つのモデルを比較します。
| モデル | 特徴 | おすすめの用途 |
| サブスクリプション | 月額/年額の安定収益。競争は激化中。 | 高機能なサーバー管理ツール、AIチャットボット |
| 消耗型アイテム (Consumables) | [注目] 都度課金。爆発的な収益力がある。 | ガチャチケット、ゲーム内ポーション、RP用アイテム |
| 買い切り型 (Durable) | 一度払えば永続。コアファン向け。 | 特別なスキン、永久ライセンス |
ポイント: 課金への誘導(アップセル)は、「邪魔にならないが魅力的」に設計することが重要です。Discord公式のプレミアムボタンなどを活用しましょう。
よくある質問 (FAQ)
Q1. Botでピン留めができなくなりました。なぜですか?
A. 2025年8月の更新で、「メッセージの管理」権限から**「メッセージのピン留め」権限が分離されたため**です。サーバー設定でBotのロールに新しい「ピン留め」権限を付与してください。
Q2. 開発したアクティビティ(ゲーム)がスマホで動きません。
A. 2025年のSDK更新により、モバイルネイティブな対応が必須となりました。タッチ操作の最適化、バーチャルキーボードの制御、セーフエリア(ノッチ)の考慮が実装されているか確認してください。
Q3. Botで新しいサーバーを自動で作る機能は使えませんか?
A. はい、スパム対策のため2025年7月にAPIが廃止されました。代替策として、Discordの「サーバーテンプレート」機能を使い、リンクを生成してユーザーに案内する方法へ移行してください。
まとめ:2026年に向けてやるべきこと
2025年の変革を経て、Discord開発者は以下の3点に注力する必要があります。
- アクティビティ開発: HTML5/WebGLスキルを習得し、インストール不要のゲームを作る。
- モバイルファースト: PCではなく、スマホでの体験を最優先にUIを設計する。
- 収益化の設計: 企画段階から「どこで価値を提供し、対価を得るか」を組み込む。
Discordは巨大な経済圏へと進化しました。この一年の情報を整理し、次のステップへ進みましょう!