Discordは私たちの「デジタルな居場所」ですが、設定を一つ間違えるだけで、スパムの標的になったり、リアルな交友関係が露呈したりするリスクがあります。特に2024年〜2025年にかけて実装された「ファミリーセンター」「パスキー(Passkeys)」「無視(Ignore)」といった新機能を正しく理解することが、安全への近道です。

本記事では、公式の最新仕様に基づき、「他人からどう見えるか」を制御するプライバシー設定から、「アカウントを鉄壁に守る」セキュリティ設定までを徹底解説します。


1. まず理解すべき「2つの設定レイヤー」

Discordのプライバシー設定には、「全体設定」と「サーバー別設定」という2つの階層があります。この違いを理解することが、快適な利用への第一歩です。

  • 全体設定(ユーザー設定): デフォルトのルール。「今後参加するすべてのサーバー」に適用されます。
  • サーバー別設定(上書き): 特定のサーバーでのみ適用される設定。「全体設定」よりも優先されます。

推奨の運用スタイル:

基本の全体設定は「厳しめ(DM拒否)」にしておき、信頼できる友人同士のサーバーでのみ、個別に設定を緩める運用が最も安全で確実です。


2. コンタクト設定:人間関係とスパムの制御

「急に知らない人からDMが来た」「怪しい投資勧誘が届いた」というトラブルは、ここの設定で9割防げます。

① ダイレクトメッセージ(DM)の受信許可

大規模な公開サーバー(公式ゲーム鯖など)に参加する場合、ここを「オフ」にすることで、同じサーバーにいるだけの他人からの接触をブロックできます。

  • 設定場所: ユーザー設定プライバシー・安全
  • 推奨:「サーバーのメンバーからのダイレクトメッセージを許可する」オフ
    • ※これをオフにしても、フレンドからのDMは届きます。

② フレンド申請の制限

無差別なフレンド申請を防ぐためのフィルターです。

  • 設定場所: ユーザー設定フレンド
  • 推奨:
    • 「サーバーのメンバー」オフ (共通のサーバーにいるだけの他人からの申請を拒否)。
    • 「フレンドのフレンド」 のみ オン (信頼できるルートのみ許可)。

③ 【新機能】「ブロック」と「無視(Ignore)」の使い分け

2024年に実装された「無視(Ignore)」は、相手にバレずに距離を置くための機能です。

機能ブロック (Block)無視 (Ignore)
相手への通知なし(反応不可でバレやすい)なし(バレにくい)
メッセージ送信不可になる送信できるが、あなたには見えない
用途明確な拒絶・攻撃的な相手穏便に距離を置きたい・通知を切りたい
  • 設定方法: 相手のプロフィール > 右上の「…」 > 「無視」を選択。

3. 「連携アプリ」と「接続」の落とし穴

見落とされがちですが、ここが最大のプライバシー漏洩・乗っ取りポイントです。

① 許可済みアプリの棚卸し(Authorized Apps)

「Bot認証」と称して、悪質なアプリに権限を与えてしまっていませんか?

特に危険なのは、**「サーバーに参加(Join Servers for you)」**という権限です。これを与えると、あなたの意思に関係なく勝手にスパムサーバーに参加させられてしまいます。

  • 確認場所: ユーザー設定許可済みアプリ
  • 対策: 使っていないBotや見覚えのないアプリは、定期的に**「認証解除」**を行ってください。

② 接続(Connections)の表示設定

Spotify、Steam、X(旧Twitter)などの連携は便利ですが、プロフィールから他のSNSアカウントが特定される原因になります。

  • 確認場所: ユーザー設定接続
  • 対策:「プロフィールに表示」オフ にする。
    • ※オフにしても、Spotifyの音楽共有機能などは維持したまま、リンクだけを隠せます。

4. アクティビティとデータのプライバシー

「今なんのゲームをしているか」といった情報は、意外なプライバシー漏洩に繋がります。

① アクティビティのステータス表示

  • 設定場所: ユーザー設定アクティビティのプライバシー
  • 推奨: 職場の人や、趣味を隠したい相手と繋がっている場合は**「現在のアクティビティをステータスに表示する」**を オフ にしましょう。

② データ利用と「Discord Checkpoint (Wrapped)」

Discordはサービス改善のために利用データを収集しています。この設定は、年末の振り返り機能に関わります。

  • 設定場所: ユーザー設定プライバシー・安全データ設定
  • 項目: 「Discordの体験をカスタマイズするためにデータを利用する」
    • オン: 年末に自分の統計(通話時間など)が見られる「Discord Checkpoint」が利用可能。
    • オフ: データの分析利用を拒否する(プライバシー優先)。

5. コンテンツの安全設定(セーフティアラート)

送られてきた画像やメッセージをAIが解析し、防御する機能です。

  • セーフティアラート(Safety Alerts):
    • 見知らぬ人からDMが届いた際、Discordが文脈を分析。「怪しいリンク」や「攻撃的な内容」が含まれていると判断した場合、チャット画面上部に警告バナーを表示します。これが出たら返信せず、「ブロック」や「通報」を検討してください。

6. アカウントセキュリティ:乗っ取りを100%防ぐ

パスワードだけでは、フィッシングサイト等で盗まれた際に防げません。

① パスキー(Passkeys)の導入 【推奨】

パスワード入力すら不要になる最新のセキュリティです。指紋認証やFace ID(スマホ)、Windows Hello(PC)を使ってログインします。

  • 設定場所: ユーザー設定アカウントセキュリティキー
  • メリット: パスワード情報自体が存在しないため、盗まれるリスクが物理的にゼロになります。

② QRコードログインの罠

「Nitro無料プレゼント」などを謳い、Discordのログイン用QRコードを読み込ませようとする詐欺が横行しています。

重要: 自分がPC画面に出したQRコード以外は、絶対にスマホで読み込まないでください。


7. 保護者向け機能:ファミリーセンター

10代のお子様が利用する場合、「ファミリーセンター」機能を利用することで、プライバシーを守りつつ見守りが可能です。

  • できること: 子供が「誰とフレンドになったか」「どのサーバーに参加したか」の確認。
  • できないこと: メッセージの中身や通話内容の確認。(子供のプライバシー保護のため)
  • 導入方法: 保護者と子供、双方のアカウント設定からQRコードで連携します。

8. 自分のデータを知る権利

Discordがあなたについてどのようなデータを保持しているか、請求して確認することができます。

  • 設定場所: ユーザー設定プライバシー・安全データをリクエスト
  • 仕様: 請求からファイルが届くまで最大30日かかります。これには全メッセージ履歴や活動ログが含まれます。

まとめ:安全と便利のバランスを

Discordのプライバシー設定は「一度設定したら終わり」ではありません。

まずは「2段階認証(またはパスキー)」と「DMフィルタリング」、そして「連携アプリの定期チェック」の3つだけでも今すぐ実行してください。これだけで、あなたのデジタルライフは驚くほど安全になります。